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— 投資 / お金 · 2026.06.26 · 9min

4%ルールはそのまま使える?──取り崩しの「率」を日本の家計で考える

「資産の4%なら一生もつ」で有名な4%ルール。Bengen/Trinityの正体と必要資産=年間支出×25倍、そして日本でそのまま使えない4つの理由(年金・税・為替・低金利)。日本の家計は年金で埋まらない差額から考える、という話。

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4%ルールはそのまま使える?──取り崩しの「率」を日本の家計で考える

「資産の4%ずつ取り崩せば、一生お金が尽きない」── 投資の話を追ってると、どこかで必ず出会う「4%ルール」。SNS でもよく見るし、FIRE(早期リタイア)の文脈で語られることも多い。

でも、ここで一度立ち止まりたい。それ、日本の家計でもそのまま4%でいいの?

先に結論を言うと、4%ルールは「考え方の出発点」としてはすごく便利。でも、そのまま日本に持ち込むと、ちょっと話が違ってくる。なぜそう言えるのか、まずは4%ルールの正体から順番に見ていく。

4%ルールの正体

4%ルールのもとになったのは、米国の2つの研究だ。

ひとつは、ファイナンシャルプランナーのウィリアム・ベンゲンが1994年に出した論文。もうひとつが、1998年にトリニティ大学の3人の教授が発表した、通称「トリニティ・スタディ」。

中身をざっくり言うと、こういうこと。

**【初年度に資産の4%を取り崩し、翌年からはその金額を物価に合わせて調整する】**

たとえば資産が3,000万円なら、初年度は4%=120万円を使う。翌年は、その120万円を物価上昇のぶんだけ増やした額を使う。これを続けても、過去のデータでは30年で資産が尽きにくかった ── それが4%ルールの主張だ。

どのくらい尽きにくいかというと、よく「95%前後の確率で30年もった」と言われる(※元データの細かい数字には諸説あって、ここでは「かなり高い確率」くらいに捉えておけば十分)。

ただし、ここに大事な前提がある。

  • 株式を50〜75%くらい持つ前提(値動きの小さい資産だけだと、逆に持たない)
  • あくまで 米国の過去のリターンとインフレ で計算したもの
  • 税金や手数料は考えていない

この「前提」が、あとで効いてくる。

便利な裏返し ── 必要なのは「年間支出×25倍」

4%ルールには、便利な言い換えがある。4%の逆数は25(100÷4)だから、こうなる。

**【必要な資産 ≒ 1年の生活費 × 25】**

つまり、年間300万円で暮らすなら、その25倍=7,500万円あれば、4%ルール的には回る計算になる。下の図に、生活費別の早見を整理した。

図:4%ルールでの必要資産の早見。年間支出240万円→6,000万円、300万円→7,500万円、360万円→9,000万円。年間支出の25倍が必要資産の目安になることを示す横棒グラフ。
図:必要資産の早見(年間支出 × 25倍・4%ルールの目安)

「自分はいくら必要か」を、ざっくり掴むのに便利な数字だ。ただ、これも「税金や年金を考えない、米国前提の目安」だということは忘れないでおきたい。

日本でそのまま使えない4つの理由

ここからが本題。4%ルールを日本の家計にそのまま当てはめると、ズレが出る。理由は大きく4つ。

① 公的年金がある

いちばん大きいのがこれ。米国の FIRE 文脈で語られる4%ルールは、基本「取り崩しだけで生活費の全額をまかなう」前提のことが多い。

でも日本の多くの人は、老後に公的年金が入る。つまり生活費の全額を資産から取り崩す必要はなくて、年金で足りない分(差額)だけを資産で補えばいい。出発点の前提が、そもそも違うんだ。下の図のイメージ。

図:老後の生活費をどう賄うかのイメージ。米国型は生活費のほぼ全額を資産の取り崩しで賄う。日本型は公的年金で大部分を賄い、足りない差額だけを資産の取り崩しで補う。日本のほうが資産で賄う部分が小さいことを示す積み上げ棒グラフ。
図:取り崩しで賄う部分のイメージ(米国型と日本型)

② 税金 ── NISAと特定口座で手取りが変わる

4%ルールは「税金を考えない」前提。でも日本では、特定口座(課税口座)で売って出た利益には 約20%(正確には20.315%)の税金がかかる。一方、NISA の中の利益は非課税だ。

同じ「4%取り崩す」でも、どの口座から崩すかで手取りが変わる。だから日本では、税金まで含めて考える必要がある。この「崩す順番」の話は、別にまとめてある。

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③ 円建て・為替

オルカンや S&P500 など、海外の資産で運用してる場合、取り崩すときに円高が進んでいると、円に戻したときの金額が目減りすることがある。ドルで使う前提の米国の4%ルールには無い、円で暮らす人ならではの揺らぎだね。

④ 低金利・インフレ環境の違い

4%ルールは、米国の過去(株も債券もそれなりに利回りがあった時代を含む)のデータで計算されたもの。日本の金利・インフレ環境は、それと同じじゃない。前提の環境が違えば、当てはまり方も変わってくる。

じゃあ日本ではどう考える?

4つの理由をまとめると、日本の取り崩しは 「年金で埋まらない差額」を、資産でどう補うかという問いになる。

ここで思い出したいのが、2019年に金融庁の報告書がきっかけで話題になった「老後2,000万円問題」。あれは、高齢の無職夫婦世帯で 毎月およそ5万円が不足し、30年で約2,000万円足りない という試算だった。

これは「資産の4%を引く」話ではなく、「年金で足りない定額の不足分を、資産から取り崩していく」話だ。日本の家計に近いのは、実はこっちの考え方なんだよね(※2,000万円という金額自体は前提しだいで大きく変わるので、あくまで一つの試算として。4%ルールと直接むすびつけるのは”考え方の対比”として読んでほしい)。

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そもそも「率」は1つじゃない

最後に、もう一段だけ。4%という数字そのものも、実は固定の正解じゃない。

4%ルールは「毎年だいたい同じ”金額”を引く(定額法)」やり方の一種。崩し方には、ほかにもこんな型がある。

中身向き・性格
定額毎年ほぼ同じ金額を引く(4%ルールはこれ)生活費が読める
定率毎年「残高の◯%」を引く暴落時は自動で引く額が減り、長持ちしやすい
ガードレール普段は多めに、相場が悪い年は引く額を減らす両者の中間

しかも、「安全な率」そのものも、専門家のあいだで見方が割れてる。近年の調査では「3.7〜3.9%くらいが安全」とするものもあれば、4%ルールの生みの親ベンゲン本人が2024年に「条件しだいでは4.7%まで上げてもいい」と見直してもいる。

つまり”正解の率”は、ざっくり3.7〜4.7%くらいの幅で、今もずっと議論されてる。「4%」という1つの数字を信じ込むより、「率には幅がある・自分の前提で変わる」と知っておくほうが、ずっと役に立つ。

まとめ ── 4%は答えじゃなく出発点

整理しよう。

  • 4%ルールは「初年度に資産の4%→以降は物価調整」。必要資産はざっくり 年間支出 × 25倍
  • ただし 米国前提・税と年金を考えない目安。日本ではそのままは使えない
  • 日本は 年金で埋まらない差額を資産で補う 発想で考える
  • 「率」は定額/定率/ガードレールがあり、安全な率も 3.7〜4.7%の幅 で議論されてる

4%ルールは、出口を考える「とっかかり」としては最高だ。でも、それを 自分の数字(年間いくら使うか・年金がいくら入りそうか)に置き換えて、はじめて意味のある数字になる

数字を1つ覚えて安心するより、「自分の場合はどうか」を一度通してみるのが、いちばん早いんだ。

もっと深く知りたくなったら