個人向け国債は必要? ── 「絶対いる」ではなく 守りの選択肢の一つ
個人向け国債って必要? 結論は「絶対いるもの」ではない。年齢などでリスク許容度が下がってきた人が、リスク分散のために選べる手段の一つ。金利上昇で利率も上がってきた(2026年6月募集分で変動10年 年1.74%)いま、普通預金との違い・中途換金の1年ルール・誰の出番かを整理する。
この記事の楽しみ方
投資を始めたばかりの頃、お金の無料相談で「国債も株も、両方持っておいたほうがいい」と言われたことがある。株が怖くて、できるだけ減らさない方へ流れがちだった私には、“元本割れしない国債”はやさしく聞こえた。両方バランスよく持つのが正しい形なんだ、と半分そう思って、少し調べてみた。
でも結局、私は個人向け国債を買わなかった。当時の私のお金は、普通預金に置いておけばそれで足りてしまったからだ。
その経験があるから、いまでもよく思う。個人向け国債って、そもそも「必要」なんだろうか?
先に結論を言っておく。個人向け国債は、誰もが絶対に持つべきもの、ではない。ポートフォリオの必需品ではなく、年齢などでリスク許容度が下がってきた人が、リスク分散のために選べる「手段の一つ」だ。そして最近は金利が上がって、その選択肢の魅力が少しだけ増している。ただ、ニュースに飛びつくようなものでもない。順番に見ていく。
先に結論 ── 必需品ではなく「手段の一つ」
「国債も株も両方持て」と言われると、両方が”必須アイテム”みたいに聞こえる。でも、そんなルールはない。株や投資信託でお金を増やしたい時期の人にとって、個人向け国債の出番は正直あまりない。
じゃあ誰の出番かというと、「守りに寄せたい人」だ。値動きの大きい株の割合を少し落として、増えなくてもいいから減らしたくないお金の置き場所がほしい ── そう感じ始めた人にとって、元本割れしない国債は候補のひとつになる。
ここで一点だけ、大事な注意を。「年齢が上がったら、機械的に国債を増やすべき」という意味ではない。年齢と配分の関係は、専門家の間でも「そう単純じゃない」と議論になっている話だ。
→ 「100−年齢」で株の比率を決めていい? ── 年齢とリスク許容度の関係は、実は論争中
大事なのは年齢そのものより、自分のリスク許容度が実際に下がった(下げたい)と判断したかどうか。そのときに初めて、「守りの受け皿をどこに置くか」という問いが出てくる。個人向け国債は、その受け皿の候補の一つ、という位置づけだ。
そもそも個人向け国債って何?
ざっくり言うと、国にお金を貸して、利子をもらうしくみだ。満期が来れば、貸した額(額面)がそのまま戻ってくる。発行しているのが日本国なので、途中で価格が上下しても、満期まで持てば元本割れしない ── ここが銀行預金と並ぶ「安全な置き場所」として扱われる理由だ。1万円から買える。
種類は3つある。
| 種類 | 利率の決まり方 | 向く場面 |
|---|---|---|
| 変動10年 | 半年ごとに見直し(金利が上がれば利率も上がる) | 今後の金利上昇に付いていきたい |
| 固定5年 | 発行時の利率が満期まで固定 | いまの利率を5年ぶん確定したい |
| 固定3年 | 発行時の利率が満期まで固定 | もう少し短く固定したい |
どれも最低保証は年0.05%。市場金利がどれだけ下がっても、これを下回らない下限がある。
下の図は、いまの3種類の適用利率(税引前)を並べたものだ。同じ「国債」でも、種類で少し差がつく。
利率は毎月見直されるので、実際に検討するときは財務省「個人向け国債・現在募集中」で最新の数字を確認してほしい(この記事の数字は2026年6月募集分)。債券や国債そのものの基礎は、別記事でもう少しやさしく扱っている。
→ 投資の種類って どれくらいある? ── 債券・国債の位置づけをざっくり
金利が上がって 利率も上がってきた
ここが、いま個人向け国債が少し話題になっている理由だ。
数年前までの日本は、金利がほぼゼロの時代が長く続いた。個人向け国債の利率も、最低保証の年0.05%に張り付いていた時期があった。正直、当時は「元本は守れるけど、ほとんど増えない置き場所」でしかなかった。
それが、日本銀行の金融政策の転換で市場金利が上がり、個人向け国債の利率も一緒に上がってきた。直近(2026年6月募集分)では、変動10年で年1.74%。かつての0.05%と比べると、ずいぶん様変わりしている。
ここで、二つの受け止め方ができる。ひとつは「利率アップ! いま買わなきゃ」という浮き足立った見出し。この乗り方はおすすめしない。税金(利子には約20%かかる)を引いた後で見ればもう少し控えめだし、後で触れる流動性の制約もある。数字だけを切り取って飛びつくと、置き場所として自分に合うかの検討が飛んでしまう。
もうひとつ、冷静な受け止め方。「守りの置き場所」としての相対的な魅力は、数年前より確かに増した。ずっと0.05%だった頃は「わざわざ国債にする意味あるかな」だったのが、いまは一度検討してみる価値のある水準にはなっている。ニュースは考えるきっかけ(枕)にすぎなくて、買うかどうかは自分の事情で決める ── その距離の取り方がちょうどいい。
「置き場所」としては 普通預金と地続き
守りのお金の置き場所として見ると、個人向け国債は普通預金・定期預金と並ぶ選択肢の一つだ。実際、使うまでの時間が短いお金(〜5年)は「貯金・個人向け国債」あたりが基本、という整理もある。
→ 資産形成の選び方 4つの軸 ── 時間×リスク×流動性×目的で決める
3つを、置き場所としての性格で並べるとこうなる。
| 置き場所 | 元本 | いつ引き出せる? | 金利の傾向 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 減らない | いつでも | 低め(時期で変動) |
| 定期預金 | 減らない | 満期まで基本すえ置き | 普通預金より少し上のことが多い |
| 個人向け国債 | 満期まで持てば減らない | 1年間は換金できない | 上の2つより高いことが多い |
金利だけ見ると国債が有利に見える。でも、ここに意外と知られていない引っかかりがある。
個人向け国債は、買ってから1年間は、途中で解約(中途換金)できない。1年を過ぎれば換金できるけれど、そのときは「直前2回分の各利子(税引前)相当額 × 0.79685」がペナルティとして差し引かれる(中途換金調整額と呼ばれる。税制などで変わりうるので換金時は確認を)。つまり、「いつでも下ろせる現金」とは性格が違う。
だから、すぐ使うかもしれないお金や、いざというときの生活防衛資金には向かない。そこは現金・普通預金の役割だ。
→ 生活防衛資金は いくら必要? ── すぐ動かすお金は現金で持つ話
こう並べてみると分かる。多くの人にとっては、普通預金でじゅうぶん足りる。少額で、いつ使うか分からなくて、利回りにそこまでこだわらないなら、無理に国債にする理由は薄い。かつての私が普通預金に落ち着いたのも、たぶんこれが理由だった。
じゃあ 誰が検討する価値がある?
整理すると、こんな線引きになる。
- 出番がある人:当面(1年超)は使う予定のない、ある程度まとまったお金があって、株の値動きは抑えたいけれど普通預金の金利では物足りない ── そう感じる、守りに寄せたい人
- 出番が薄い人:これから積極的に増やしたい人(株・投資信託の役割)/ すぐ使うかもしれないお金(普通預金)/ いざというときの備え(現金・生活防衛資金)
種類をどれにするかについては、「金利が上がっていく局面では、半年ごとに利率が見直される変動10年が無難」とよく言われる。金利が上がれば利率も付いてくるので、取り残されにくいからだ。一方で「いまの高めの利率を固定したいなら固定型」という見方もある。
ただ、これはあくまで一般的な考え方の紹介であって、「あなたはこれを買うべき」という助言ではない。どれが合うかは、そのお金をいつ使うか・金利がこの先どう動くと思うかで変わる。ここは自分の事情に引きつけて考えるところだ。
まとめ ── 必須じゃない でも選択肢は増えた
長くなったので整理しよう。
- 個人向け国債は ポートフォリオの必需品ではない。株と両方持て、というルールはない
- 出番があるのは 守りに寄せたい人(リスク許容度が下がってきた人)。年齢で機械的に増やす話ではない
- 金利上昇で利率は上がってきた(2026年6月募集分で変動10年 年1.74%)。ただしニュースに飛びつくものではない
- 置き場所としては 普通預金と地続き。1年は換金できない制約があり、すぐ使うお金には向かない。多くの人は普通預金で足りる
「国債は必要か?」への私なりの答えは、「絶対いるものではないけれど、守りに寄せたい人にとっては、前より検討する価値のある選択肢の一つになった」だ。買った・買わないの正解はなくて、自分のお金をいつ使うか、どれだけリスクを抑えたいか ── そこから逆に決まってくる(※この記事は個人向け国債の位置づけを整理したもので、特定の商品や配分を勧めるものではないよ。適用利率は毎月変わるので、検討時は財務省の最新情報を確認してね)。
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